動物倫理とは?わかりやすく解説【7つの事例も紹介】

動物倫理とは?わかりやすく解説【7つの事例も紹介】

動物倫理ってそもそも何でしょうか。文字通り動物の倫理を考える分野ですが、僕らは動物と共存しているため、誰もが身近に感じる倫理観と言えます。今回はそんな「動物倫理」という言葉の意味や、扱うテーマ・事例をざっと紹介していきます。

参考文献:マンガで学ぶ動物倫理 わたしたちは動物とどうつきあえばよいのか

僕が動物倫理について深く知ろうと思ったきっかけの本です。さまざまなテーマを取り上げているので入門書としておすすめです。

動物倫理とは?

「動物倫理」という言葉自体が比較的最近つくられた言葉で、この言葉がよく使われるようになったのは21世紀になってからです。著者は動物倫理をこのように定義しています。

「動物倫理」という分野をひとことであらわすなら、人間は動物に対してどのように接するべきか、ということを考えるものだといえます。

p136

シンプルでわかりやすい定義ですね。「倫理」という言葉が、「人としての善い行い」や「道徳・モラル」という意味があるので、動物倫理は「動物に対する倫理」といえるでしょう。

倫理と動物倫理の違い

動物にもいろいろありますが、動物倫理というと、主に哺乳類や鳥類で、伴侶動物、実験動物、産業動物、展示動物、野生動物などが考察の対象となっています。

動物倫理の対象

こう見ると、関わりのない人なんていないんじゃないかってくらい誰しもが考えておきたい倫理観ということがわかりますね。

「人を殺してはいけません」ってことは当たり前にわかってるのに、動物に対してだとそのへんの感覚がゆるゆるになっている僕らです…

7つの事例

本書で扱われている7つのテーマの概要を紹介します。動物倫理とは具体的にどんなことを考える分野なのかの輪郭がわかると思います。

ペットのしつけ

ペットは人間と長い歴史を共にしてきた伴侶動物ですが、夜に吠えまくったり、散歩中にほかの犬と喧嘩したりと問題行動を起こすことがあります。

そのためにはしつけ(生育の過程で適切な社会化)をする必要がありますが、動物にとって自然な行動を抑えこむことは動物にストレスを与えてしまっているかもしれません。

僕らは毎日自由に好きなことをして過ごしていますが、動物にもその権利があるのではないでしょうか。人間の都合によって「うるさい」とか「しつけをちゃんとしろ」というのは人間の勝手な都合ではないでしょうか。

当然、僕らも法律で「やってはいけないこと」が定められているからこそ社会の秩序が保たれているのと同じように、きちんとしつけをすれば動物自身にとっても幸福を高める面もあります。

問い:動物に言うことを聞かせるのは人間のエゴか?

殺処分と去勢

犬や猫の去勢(生殖に必要な部位を切除し、種として生殖不能な状態とすること)は、病気を防げたり、ストレスを軽減したり、望まない繁殖を防げたりとメリットが多い。

そして去勢の問題は以下の流れのように、伴侶動物の殺処分と大きくかかわってきます。

  1. 猫は繁殖力が強く、去勢していない猫を放置するとあっという間に数が増える
  2. 近隣で糞尿や鳴き声などの問題が起きる
  3. 保健所などに収容され、殺処分される

繁殖して手に負えなくなり殺処分に

もともと伴侶動物の殺処分は「狂犬病(野生動物からうつる感染症)」対策として始まりました。そのため昔は猫よりも犬の殺処分の数の方が多かったのですが、2000年頃に猫の殺処分が初めて犬を上回りました。

環境省のデータによると2019年(令和元年)の殺処分数は、犬が5,635匹、猫が27,108匹で合計32,743匹。365日で割ると1日約89匹がどこかで命を失っている計算です。

生まれてすぐに死んでいく子猫たちはかわいそうだけど、去勢することにも抵抗がある、という考えもあります。しかし、去勢をしないと殺処分が増えてしまうことも考える必要があります。

問い:なぜ伴侶動物の殺処分がなくならないのか?去勢はかわいそう?

化粧品の動物実験

化粧品は目の辺りなどに直接塗るものなので安全に使えるものでなければなりません。そのために化粧品メーカーは、まずウサギなどの動物でその安全性を実験してから商品を販売していました。

こちらの画像は、本書(マンガで学ぶ動物倫理)でも紹介されている「ドレーズテスト」という、ウサギの眼にテストしたい物質を点眼して経過をみる実験の様子です。

画像引用元:http://m.animalplanetland.com/JP/news/?artNo=8667

言ってしまえば、化粧品という生きる上で必要ではないもののために、こういった動物の犠牲があります。

ヨーロッパでは「美しさのための犠牲はいらない」というスローガンのもと、2004年から化粧品のための動物実験の実施が禁止されました。

日本国内でも、2013年に大手化粧品メーカーの資生堂が製品開発では動物実験をおこなわないと発表して話題になりました。

伴侶動物の殺処分は明らかに不必要な死ですが、動物実験の場合は人類の幸福に貢献しているという側面があります。

「動物実験反対!」と言うことは簡単ですが、過去に行われていた実験のおかげで今があることや、動物実験を完全に廃止することで化粧品業界の発展を阻害しかねないことも考慮したうえで、どう考えるかが重要であると思っています。

問い:人間の嗜好品のために動物の命を奪ってもよいか?

肉食と集約的畜産業

農林水産省の「畜産統計」によると、平成31年(2019年)の乳用牛・肉用牛・豚・採卵鶏・ブロイラー(肉鶏の一品種。食肉専用・大量飼育用の雑種鶏の総称)の飼養頭数は以下の通りです(統計の概要についてはこちらのページがわかりやすいです>農畜産業振興機構「畜産統計」)。

  • 乳用牛:133万2000頭
  • 肉用牛:250万3000頭
  • 豚:915万6000頭
  • 採卵鶏:1億8236万8000羽
  • ブロイラー:1億3822万8000羽

採卵鶏とブロイラーは日本の人口より多いんですね!(驚

畜産動物がどんなふうに育てられているか想像してみてください。

日本では、牛を放し飼いにしている農家はそこそこありますが、豚や鶏はブランドものでもない限り徹底的に「合理化」された環境で育ちます。これを「集約的畜産業」や、あるいは批判の意味をこめる場合は「工場畜産」と呼びます。

画像引用元:https://www.hopeforanimals.org/eggs/235/

鶏の場合は「バタリー・ケージ」という狭いケージの中で身動きがとれないようにして、卵を自動的に回収する仕組みが開発されてきました。

化粧品の動物実験とは違い「お肉は生きるために食べないといけない」という意見もあると思いますが、本当にそうでしょうか?

お肉を食べないという選択もできる中で「好きだから」「美味しいから」という理由で食べている観点からすると嗜好品と言えるのではないでしょうか。

問い:犬や猫と、豚や鶏は違うのか?

動物園

日本語の「動物園」にあたる英語は「zoo」で、これは「zoological park(動物学公園)」の略です。動物園というと人間の娯楽の一環というイメージがあるかもしれませんが、動物園には以下の4つの役割があるとされます。

  1. 希少種の保護などの環境保全の役割
  2. 野生動物や環境について教育する教育の場としての役割
  3. 野生動物や環境についての研究をおこなう研究センターとしての役割
  4. 市民を楽しませるレクレーションの役割

「すべての動物には人間と同じように権利がある!」というとなかなか受け入れるのが難しいと思います。ですが、チンパンジーやゴリラのように、ヒトとの血縁関係が非常に近く、知的な能力や社会的な能力が高い大型類人猿はどうでしょうか。

この『マンガで学ぶ動物倫理』の中で、『大型類人猿の権利宣言』という本が紹介されています。

『大型類人猿の権利宣言』の内容紹介

私たちは人間であると同時に大型類人猿である。チンパンジー、ゴリラ、オランウータンと人間との境界をなくし、彼らも「人権」をもつべきとする既存のモラルへの警鐘の書。

人間を勧誘・監禁すれば大問題なのに、チンパンジーやゴリラは問題にはなりません。現在の動物園や実験施設は本当に大型類人猿を不当に監禁していないでしょうか。

問い:動物には自由に行動する権利がないのか?

外来生物

本書(マンガで学ぶ動物倫理)では、外来生物の例としてヌートリアが取り上げられています。

画像引用元:https://www.fnn.jp/articles/-/15020

ヌートリアの毛皮は、水に濡れても保温できる毛皮として質が高いとされ、世界各国で毛皮を目的に輸入されていました。しかし、需要がなくなって捨てられて野生化していきました。

もともと日本にはいなかった外来生物ですが、野生化したヌートリアはどんどん子どもを産んで増えてしまい、畑の作物を食い荒らす被害が報告されているため問題視されています。

人間の都合で連れてきておいて用がなくなったらポイ。そして「もともといないヤツらだから駆除する」というのが正しい行為だとは思えませんよね。

動物愛護の対象は犬や猫だけではないはずです。

問い:外来生物は「愛護」されなくてよいか?

医療のための動物実験

現在使われている医薬品の多くは、効果の有無や毒性・副作用の有無を確かめるための動物実験を経て、人間に試験的に適用され、最終的な認可に至ります。

伴侶動物や化粧品などの嗜好品のための動物実験に比べると、医療のための動物実験は必要悪のような気がします。

ですが、ある一人の人間を犠牲にして大勢の命を助けることを肯定する人は少ないはずです。「あなたが犠牲になれば、多くの人が助かるから!」と言われて納得して死を迎えることができるでしょうか。

動物は人間のために実験に使ってるけど、それを人間に取っ替えることができないというのは、やはり「人間は特別だから・・・」という種差別が根底にあるはずです。

問い:実験動物のマウスには生きる権利はないのか?

まとめ

「動物倫理」という分野をひとことであらわすなら、人間は動物に対してどのように接するべきかを考えるもの。

  1. ペットのしつけ
    動物に言うことを聞かせるのは人間のエゴか?
  2. 殺処分と去勢
    なぜ伴侶動物の殺処分がなくならないのか?去勢はかわいそう?
  3. 化粧品の動物実験
    人間の嗜好品のために動物の命を奪ってもよいか?
  4. 肉食と集約的畜産業
    犬と猫と、豚や鶏は違うのか?
  5. 動物園
    動物には自由に行動する権利がないのか?
  6. 外来生物
    外来生物は「愛護」されなくてよいか?
  7. 医療のための動物実験
    実験動物のマウスには生きる権利はないのか?